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「学生にはもっと仕事観・職業観を身に付けてから来てほしい」—— 採用の取材でよく聞かれる声である。 しかし、一度も働いたことのない学生が、就活だけでそうした価値観を身に付けることはできるのか。 そこで、多くの学生が就活前に仕事を体験する機会であるアルバイトに注目。 現役大学生6人に、アルバイト経験と就活によって得た、それぞれの仕事観を聞いた。



〝就職活動〟と〝アルバイト探し〟ではどのような点が違いますか?
勝俣:就活とアルバイト探しでは全然違います。アルバイトはあくまでも「お金」目的で探しますけど、就活は、自分の人生を通してやりたいことが、実現できる環境かどうかが基準になります。
長澤:親から決して安くないお金を出してもらって大学に行っているので、就職先は、大学で勉強していることを生かせる会社を中心に考えています。一方でアルバイトの場合は、家から大学まで2時間かかり、学業との両立を考えれば、まず場所、それから勤務時間で 選びます。
大竹:アルバイトは、学生時代を楽しむ上でのお金を稼ぐ手段です。基本的に大学やサークルの空き時間を使いたいので、シフトの自由度や駅から近いという理由で選びます。一方就活は、自分の生き方を選ぶようなものです。自分のやりたいことや価値観と合うかどうか、職場の雰囲気などをじっくりと見極めます。アルバイトとは探し方も、決め方も違ってきます。
大須賀:私は、就職もアルバイトも自分のやりたいことを軸にして探しています。ケーキが好きなのでケーキ屋さんで働いていたのですが、そこで接客ということの面白さを知りました。その気付きによって、就活では当初、子どもに関連した仕事しか考えていませんでし たが、金融の窓口業務など、幅広い業界や企業への興味が広がりました。

アルバイト経験を踏まえ、働くモチベーションは何だと思いますか?
大竹:私の場合はキャリアアップです。現在アルバイトしている飲食店では、より良い仕事というよりも、与えられた仕事をそつなくこなすことを求められているため、そうした意欲は満たされないです。
長澤:私のアルバイト先は社の接待などでも使われるちょっと高級な居酒屋なのですが、取り皿を変えるタイミングとか、ちょっとした気配りにお客さまが気づいて「ありがとう」と言ってもらえると、「よっ しゃ」って気持ちになります(笑)。それで時給は変わらないんですが、次の機会でもやって みようという気持ちになりますね。
堀尾:僕にとっても感謝されることは大事なモチベーションですが、仕事で満足を感じて次につなげるには「成果」が重要だと思います。成果を出したからこそ感謝されるし、報酬も付いてくる。アルバイトの場合は、何をやっても時給や日給が決まっているので、取りあえず失敗しなければいいやという考えになって、成果を求める気持ちは生まれにくいです。
青木:僕の場合もやっぱり「感謝されたい」というのがあります。クレーム処理の仕事をしていた時、僕を指名して電話をかけてくるおじいさんがいたんです。初めに電話を取った時に、僕が丁寧に話を聞いてあげたからだと思うんですが、「僕と話したいんだな」と思うと嬉しくなりました。将来は教員になりたいと思っているのですが、例えば自分の教えた子どもが卒業するときに「ありがとう」と言ってくれたら、それが自分にとっての一番のモチベーションになるんじゃないかと思います。
勝俣:面白いこと、好きなことを仕事にしていたら頑張ろうと思うし、結果お金が付いてきて、それがモチベーションになるんだろうけど……。アルバイトはトップダウンで決められたことを決められたやり方でやるだけだから、そこにモチベーションを求めるのは難しいですね。だからこそ社会に出るときはそうじゃない環境を選ぼうと思って就活していました。

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社会に出てからの働き方に影響を与えるようなアルバイトでの経験はありますか?
長澤:接客中、お客さまにビールを掛けてしまったことがありました。お座敷では、必ずお盆をいったんテーブルに置いてから二つずつビールを運ぶように教わったのですが、慣れてきたのと、混んでいたこともあって、お盆に載せたまま持って行っちゃったんです。結果、お客さまはもちろんお店にも迷惑を掛けることになって……。工夫や臨機応変に対応することはいいことだと思うんですが、やっぱり仕事の基本は大事なんだなと、その時すごく学びました。
青木:塾の講師をしていた時、先輩の講師が生徒だけではなくて、親のこともしっかり見ていることに気付いて「すごいな」と思いました。社会で働く上では、状況に合わせて、いろんな視点を持たなきゃいけないなって思いました。
堀尾:アルバイトというか、インターンのつもりで転職サイトの営業をやっているんですが、そこではいろいろな仕事を任せてもらえるし、学ぶことも多いです。そこでの仕事を通して、自分はこんな業界に向いているんじゃないかとか、人に影響を与えるような仕事がしたいなとか、真剣に考えるようになりました。
大竹:アルバイトでは、社会のルールとか、他の人との接し方とか、学ぶ機会はあったと思います。でも私の場合「しょせんバイトだから」という意識で、それを社会に出てからの働き方に生かそうという発想に結び付いていませんでした。今日、将来の仕事のことも考えて自分のやりたいことをアルバイト先に選んだり、金銭的なもの以外で得られるものがあったという話を聞いて、私ももう少し早くそういう視点が持てていたら……と少し後悔しました。

《座談会参加者》①…アルバイト選択の優先項目 ②…就活先の優先項目
青木卓己(日本大学4年) ①シフトの柔軟性、時給 ②社内風土、自己実現の環境
大須賀さやは(共立女子大学4年) ①時給、オープニングスタッフ ②業界、説明会・セミナーの印象
大竹真理子(国際基督教大学4年) ①シフトの柔軟性 ②自己実現の環境、理念に共感
勝俣友紀子(東京女子大学4年) ①シフトの柔軟性、時給 ②理念に共感、社員
長澤真里子(共立女子大学4年) ①場所、勤務時間 ②業界、社内風土
堀尾隆光(東洋大学4年) ①シフトの柔軟性、時給、場所 ②業界、社風、社会貢献性